デジタル教科書の導入に関して文部科学省が中間まとめ案を示したという記事が2月24日の朝刊で取り上げられていました。

役立つ情報の収集、書籍を基本に端末も使うのは効果的…[デジタル教科書を問う]中間まとめ案<上>

出典:読売新聞(2021/02/24 05:00)

「理解助ける」「視力低下」 デジタル教科書、長短ふまえ議論加速

出典:IT media NEWS(2021/02/24 07:00)

デジタル教科書にも、紙の教科書にもメリットデメリットがあります。これは教科書に限らず、世の中に存在するものすべてにあります。しかし、ICTが関係するとメリットデメリットのどちらかに正解を求めているように感じて仕方がありません。

例えばデジタル教科書は紙の教科書よりも記憶に残りづらい(わかった気になる)という特徴が書かれていました。これは私も同意します。ただ、実際に学校へ通学している小学生や中学生を見ると、「あのリュックの中身は何なのか」と疑問に思うくらい重そうです。果たしてあれだけ重量のある書籍を毎日リュックへ入れて運んだ中に、記憶に残したい情報がどれだけ詰まっているのでしょうか?

そこでデジタル教科書だけを活用するのではなく、まずは副教材(おそらく、ほとんど使わないのに分厚く重い原因かと思います)をデジタル化してタブレット端末で見られるようにする。主たる教科書は重要ポイント(記憶に残したい部分)のみ紙の教科書にして、グラフや数字など主体的に検索して見つける情報をデジタル教科書で補う。こんなことも可能だと思います(たぶん荷物も軽くなる)。「どちらか」ではく「どちらも」がこれから必要になる考え方だと思っています。

というのも、私はこれまで紙の教科書で学生時代を過ごし、社会人になってからもプログラミングやシステム開発、マーケティングやセールスコピーなどの学習は「紙」で行ってきました。しかし、実際に仕事をするときは、ほとんどがデジタルです。どのように使い分けているのかを考えてみると、次のようになっています。

  • 初めて学習するとき → 紙の書籍
  • 専門用語がわからないとき → デジタル環境で探す
  • アイデアをアウトプットするとき → 紙に書く
  • アウトプットをまとめる → デジタル環境で書く

記憶の定着や細部までの理解、イメージを具体化するときには、デジタル環境よりもバッテリーや通信環境の心配が要らない、好きなときに好きなように読んで書くことができる紙を使っています。反対に調べものや他人へ提出するようなものはデジタルを使っています。

この使い分けを見ると「スマホ脳」の著者アンデシュ・ハンセン氏、教育評論家の尾木直樹氏もおっしゃっていますが、デジタル教科書は「調べ学習」に活用するのが良いのだろうと感じます。後は、清書や資料作りのツールとしての活用も有効です。

今後の流れを考えるとデジタル化の波を止めることはできません。教科書のデジタル化は不可避だと感じます。でも、紙の教科書がなくなるとも思えません。だって10年や20年で人間が記憶する方法や学習習慣を大きく変化させられるとは思えないですから。しばらくは無理にデジタル教科書だけにするのではなく、紙の教科書と共存させて柔軟に行き来しながら活用する道を選んでほしいと思います。