メーカー企業様のECサイト(DtoC)対策を経験したからこそわかる、成果を変えるなら知っておきたい購入フローのポイントを解説します。

ECサイトの購入フローとは?

年を追うごとにECサイトは増えています。そのため売上の伸びに苦しんでおられる担当者の方もいらっしゃることでしょう。また、増えている状況を理解しながら、自社でもECサイトで販売を強化しようと検討されている経営者の方もいらっしゃると思います。

ここで不都合な真実をお伝えします。助成金や補助金を利用したり、多くの資金を準備したり、多くの時間を活用したりしてECサイトを作り公開しても売上はなかなか向上しません。成果を変えたいのなら購入者の頭の中へ入り込み「購入フロー」を理解し、競合に負けない自社オリジナルの仕組みを構築しなければいけないのです。

では「購入フロー」とは、いったいどのようなことを指しているのでしょうか?簡単に説明しますと、次のようなことを指しています。

ECサイトへの訪問者が、商品を見つけ、カートへ入れ、決済するまでの流れ

この流れを考え、見直し、改善し、テストすることで売上アップにつなげることができます。反対に、この流れを考えず、自分たちの売りたい商品ばかりを前面に押し出し、暑苦しいセールスをテキストや画像や動画で行い、邪魔なポップアップのウィンドウを表示し続けても、訪問者に合った購入フローになっていなければカートへ入れられたとしても、決済までは進んでもらうことはできません。よくある「カゴ落ち」が続くばかりか、そもそもカートへ入れられないという状況になってしまいます。

購入フローは、ECサイトを健全に運営し、売上アップするために外すことはできません。そして、常に変化する購入者の流れをチェックし、改善し続ける覚悟が必要なのです。

購入フローが売上に影響する理由

購入フローについての説明に続いてお話しておきたいのが、どうして購入フローが売上に影響するのかということです。ここであなたにご理解頂きたいのは、ECサイトにおいてもっとも売上を左右するのが「カゴ落ち」という状態です。カゴ落ちとはご存じのように、カートへは商品を入れたけれど決済まで進まずに離脱してしまった状態です。

後から思い出して戻ってきてくれれば良いですが、基本的にリアル店舗でもECサイトでも同じように、一度離脱した人が戻ってきて購入する確率はゼロに等しいです。さて、ここで視点を少し変えてみてください。もし「カゴ落ち」を防ぐことができたなら。「カゴ落ち」させず決済まで誘導できたなら。売上にプラスの影響を与えてくれることは間違いありません。

つまり、カゴ落ちさせないためにも購入フローを改善することで、悩ましいECサイトの売上アップを目指すことができるのです。

購入フロー7つのポイント

それでは説明と理由をお伝えしましたので、ここからは購入フローを改善する7つのポイントを解説します。

ターゲット

購入フローを改善するために、最初に見直すのはECサイトへ呼び込んでいるターゲット設定です。どんな人に集まってもらいたいのか。どういう価値観の人に購入してもらいたいのか。ここが明確になっていないと、購入フローを改善することはできません。

例えば、ECサイトでダイエット食品を販売していたとしましょう。次の年代の独身女性向けだった場合、同じ商品でも伝え方は変わってきます。

  • 20代女性
  • 30代女性
  • 40代女性
  • 50代女性
  • 60代女性

それぞれ「ダイエットしたい」という欲求はありますが、ダイエットをする理由は違っています。

  • 20代女性なら「モテたい」
  • 30代女性なら「自己管理できている自分」
  • 40代女性なら「若々しくありたい」
  • 50代女性なら「健康的でありたい」
  • 60代女性なら「老後の不安をなくしたい」

このような本当の理由があると思います。そして、こうした本当の理由を見つけることで購入フローを改善することができるのですが、ターゲットが明確でなければ理由を見つけることはできません。

ECサイトで売上に悩んでいるところで多いのが「女性のみなさん」をターゲットとしているため、曖昧な理由で呼び込んでしまい、訪問した人は「自分が本当に解決したいことではない」と感じ、カゴ落ちしてしまうケースです。

どんな人でも話しかける相手を決めないと、何を伝えて良いのかわかりません。これはECサイトでも同じです。「女性のみなさん」では、誰に何をどのように伝えれば良いのか曖昧になってしまうのです。このような状態にならないためにも、まずは「ターゲット」が明確に設定できているか確認しましょう。購入フローは「人を呼び込む」ところから既にスタートしているのです。

メッセージ

購入フローを改善するためのポイント2つ目は、ターゲットに対してどのようなメッセージを伝えるのかです。よく見かけるのは、商品やサービスの特徴ばかり伝えていることです。特徴は拾いやすく表現しやすいため仕方の無いことですが、購入を考えているターゲットの心に響くメッセージを作るなら特徴よりも「ベネフィット」を優先することが必要です。

では、ベネフィットとはどのようなことなのかというと、難しく考える必要はありません。先ほどターゲットのところでお話しましたように、明確になっているターゲットが商品やサービスを利用することで「どんな未来を得られるのか」について表現すればOKです。例えばダイエット商品なら次のように考えることができます。まずは特徴から考えます。

  • ワンサイズ下の洋服が余裕で着れます
  • -10kgを目指せます
  • ウエストが-5cmに!

これらは特徴ですが、ここから30代独身女性をターゲットとするなら、ベネフィットは次のように表現できるでしょう。

  • ワンサイズ下の洋服を選べるので、これまで以上にいつでもコーデが決まりやすくなります
  • -10kgを目指せますのでシルエットもシャープになり知的な印象に視線が集まるでしょう
  • ウエスト-5cmなら薄着シーズンの視線も安心!いつでも自信を持って振る舞えます!

ダイエット商品を購入することで、どんな未来が手に入るのか。今とは違う自分が想像できるのか。その結果、どんな快適な暮らしや環境が手に入るのか。こうしたことをイメージしてもらうことがベネフィットの基本です。

デザイン

ECサイトのデザインも購入フローの改善ポイントになります。まず基本中の基本を確認しましょう。

基本中の基本

ECサイトのデザインをパッと見たとき、次のように素人が作ったようなデザインはNGです。

  • 画像の大きさがバラバラ
  • 文字サイズも統一感なし
  • 誤字脱字が多い
  • 読みづらい
  • 意味がわからない
  • 提供している商品やサービスの雰囲気に合っていない

このような雰囲気が感じられるなら、まずはプロにデザインを改善してもらいましょう。

ターゲットの好みを知る

デザインを改善するときに理解しておきたいのは、ターゲットが好むデザインへ近づけることです。間違っても自分の好きなデザインやトーンでECサイトを作ってはいけません。

というのも、ターゲットがECサイトへ訪問した場合、第一印象はデザインなので、この一瞬で購入するかどうかが無意識に判断されているからです。

使い勝手

ECサイトへ集まってくる人たちは、どのような媒体を使っているでしょうか?

  • スマートフォン
  • タブレット
  • パソコン

それぞれ画面の大きさや縦長、横長、操作方法が違います。そのため、ターゲットがよく利用している媒体に合わせて「操作しやすい」デザインを採用する必要が出てきます。

最近では一般化している「レスポンシブデザイン」と呼ばれるスマホでもタブレットでもPCでも自動的にデザインを変化させてくれる技術がありますので、それぞれに適したデザインを作るようにしましょう。もしスマートフォンからの訪問者が多いのに、ECサイトのデザインがパソコン用だけだと、単に表示が小さくなる(縮小される)だけなので、スマートフォンから購入するのは大変難しくなり、カゴ落ちや離脱の原因になります。

スピード

スマートフォンでもパソコンでも、どの媒体でも気にしないといけないが表示スピードです。ECサイトで商品の内容を見ようとしても、なかなか表示されないと面倒になって別のページへ離脱してしまいます。また、購入しようと決済画面へ移動するとき、表示スピードが遅いとカゴ落ちする可能性も高くなります。

最近では様々な分析や計測をするため「JavaScript」と呼ばれるプログラミング言語が、ECサイトのページに埋め込まれていますが、これが原因でスピードが低下することもあります。また、ECサイトに多くの広告を表示することでスピードダウンを招いているところもあります。

表示スピードが遅い場合は思い切って分析や計測を少なくしてみましょう。また、広告はできるだけ少なくする方が良いですね。

購買心理の理解

購買心理の理解も購入フローの改善に欠かせません。基本的には5つの心理を知り、ECサイトで改善するところはどこかを探って頂きたいと思います。

認知

ECサイトでの購入は、サイトへ呼び込む広告やメール、SEOコンテンツ、SNSから始まっています。そのため、どの場所で認知されるのか、どのようなデザインで認知されるのかが重要です。

興味

認知してもらったら、次は興味を持ってもらわないといけません。キャッチコピーやセールストークなどで興味を引きましょう。

  • 期間限定
  • セール
  • 売れ筋ランキング

このような「見せ方」も興味を持ってもらえる方法です。

行動

できるだけ長く、多く、ECサイトの中を回遊してもらえるようにします。そのためには商品写真が魅力的である必要が出てきます。また、興味を引きやすいカテゴリー設定や、おすすめ商品の表示なども必要です。

比較

購入を検討している人は誰でも他のECサイトの商品と比較します。そのため、私たちもどういったことが比較されるポイントになっているのかを理解しておきましょう。

  • 商品の価格
  • 送料
  • アフターサポート(保証期間や返品対応)

こういったことは誰でも比較しますので、他社とは違うメリットをアピールする必要があります。また、他社ECサイトと差別化しやすい部分ですので、ぜひ自社独自の強みを見つけましょう。

決済

決済は誰でもストレスを感じる部分です。例え1円のものを購入するとしても人は誰でもストレスを感じます。ですから1000円以上の買い物をするとなると、相当なストレスを感じますし、少しでもイラっとしたら「購入しない」という判断をしがちです。

そのため、できるだけ決済ではスムーズにストレスなく済ませられるようにしておきましょう。決済画面であれこれ細かな個人情報を入力してもらうのはNGです。必要最低限の項目だけを入力し、ササッと決済が終わるようにしておきたいですね。

決済方法

ここは大変重要です。また、ターゲットによって様々な方法を用意しておかないといけません。

例えば、30代~40代の方なら「○○Pay」が利用できると簡単に決済可能になります。20代の独身女性で会社勤めされている方なら、コンビニ決済が必要になるケースもあります。

50代以上の方ならクレジットカード。インターネットの決済に慣れていない方の場合は、銀行振込や代引きというのも健在です。

インターネットに慣れ親しみ、IT技術に明るい方なら「paypal」が使われることも多いです。どの決済方法が良いのかという視点ではなく、扱う商品やサービスとターゲットの年齢やライフスタイルから、最適な決済方法を準備しておくのが大切です。

定期的な見直しで改善

一時的に購入フローを見直し改善しても、ECサイトの運営を放っておくと売上は良くて横ばい、一般的には下降することになります。そのため購入フローの見直しと同時に定期的な業務フローやECサイトを構成している情報も改善することが大切です。

サイト構成

ECサイトへ訪れる人は、いつまでも同じ傾向の人とは限りません。また、通信機器や通信速度の変化によって、ユーザーにとって見やすく使いやすいサイト構成は変化します。

常にインターネットに関する動きに関心を持ち、消費者行動に変化が起こる気配を感じたときには、次のデザイン(UIなど)を検証することも必要になります。

コンテンツ

商品詳細ページやお役立ちページは「コンテンツ」と呼ばれる価値ある情報です。そのためGoogleの検索結果に影響することもありますし、ECサイトへの訪問者に良い印象を与えるセールスツールになっていることもあります。

コンテンツがGoogleの検索結果(SEO対策)に影響しているのなら、Googleの検索アルゴリズムの変動によって、自社のコンテンツがどのような評価を受けているのかチェックすることが大切です。

セールスツールになっているのなら、Googleアナリティクスを使って分析し、成約率の変化に合わせて内容を改善することも重要になってきます。

リピート対策

ECサイトの購入フローは良いのにリピートされない。そんなところもあります。こうしたときの原因で多いのは、お客様への対応がお粗末だったということが上げられます。

  • 問い合わせがあったのに、返信するまでに3営業日以上掛かっている
  • クレームが届いているのに放っている
  • 返品の問い合わせがあるのに的を得ない回答をしている

どれも心証は良くありませんので、もう一度買おうという気持ちはなくなります。反対に、きちんとした対応をすると、リピート率70%以上ということも可能です(これはクライアント様で実際に出ている数字です)。

物流対策

メーカーさんのEC運営で多いのですが、消費者との関わりはどこまでなのかお聞きすると「出荷するまで」と答えられることがあります。これ、大きな間違いです。

ECでの消費者戸の関わりは「商品が届いて開封されるまで」を意識することが大切です。そのため次の点は大いに気にしてもらいたいと思います。

  • 梱包内容の印象は良いか
  • 梱包する入れ物は購入して良かったと感じられるか
  • 商品を届ける運送業者はきちんとしているか
  • 荷物を開けたとき「感動」を生み出せるか

間違っても「段ボールへポン」と入れただけの梱包や、「安いから」という理由で契約した「スリッパで配達へ行くような配送業者」を使ってはいけません。

コミュニケーション

EC担当者と社員の方々。経営者も同じですが社内でEC事業に関してコミュニケーションが取れているのかも大切です。EC担当者だけがわかっている運営は、属人的になっているため事業としては大変危険です。人的ミスが発生していてもわかりませんので、大きなクレームや悪評の原因になるかもしれません。

さいごに

今回お話しました「購入フロー」を改善することで、ECサイトの売上を向上させるポイントが見つかると思います。

反対に購入フローの改善を無視し、いくら動画マーケティングやSNSマーケティングを導入しても、訪問者は増加するかもしれませんが購入されない可能性が高くなります。私たちECサイトを運営する側としては、もちろん訪問者が増加することは嬉しいことですが、最終的には「購入」して頂かないと事業として意味がありません。

ECサイト運営の目的は「いいね」や「フォロワー」を増やすことではなく「利益」を増やすことである。この目標を忘れてはいけないですね。