通販で新規顧客を獲得するために昔から使われていた「初回無料」「お試し」の使い方が難しくなりそうです。
出典:読売新聞オンライン(2021/02/22 07:24)
ニュースソースは同じですが、livedoor NEWSでも配信されていました。図解されているので少しわかりやすいです。
出典:livedoor NEWS
詐欺的な契約は良くありませんので被害防止は絶対に必要です。今後は現実的にどの程度まで刑事罰になりそうなのかを正しく理解することが必要です。このあたりは「薬機法」に近い感覚でしょう。
「初回無料」「お試し」を使ったセールスプロモーションはあちこちで利用されています。そのためルールを厳格にするとネット通販だけではなく、リアル店舗で使っている業界にも影響が出てくるはずなんですね。
例えば「フィットネス業界」。入会時に正しく説明されていますが、初回無料や初回500円というキャンペーンの場合、契約期間の縛りが必ず出てきます。この期間が「長い」という理由で刑事罰になるとすると、フィットネス業界の集客戦略は根本的にセールスプロモーションを考え直さなければいけません。おそらく正しく考え直すと「初回無料」「初回500円」というのはかなり難しくなるはずです。無理にやってしまうと業界の従業員へしわ寄せが出ることになるでしょうし。
さて今回の新聞報道ですが、問題になっているのは健康食品系のようです。確かに大手でも健康食品を通販で扱っている場合、「初回無料だけど4か月は継続しないといけない」という注意事項は記載されているのですが、老眼の方にはほとんど見えないと思います。また、ネット通販で活用されるランディングページ(セールス用のウェブページ)にも注意事項として記載されていますが、文字が小さいか視線の届きにくい場所に書かれていることもあります。詐欺まがいのよくわからないサイトなら、なおさら発見しづらいところに書かれているか、そもそも書いてないところもあると思います。
こういった「だまし商法」は、刑事罰が導入されようがされまいが関係なく、長い目で見ると顧客を失うことは間違いありません。そして、ここからが大事なポイントですが、業界の中でどこか1社がやってしまうと同じ業界で真面目にやっている会社も影響を受けるということです。消費者心理としては「こっちも同じだろう、だから騙されないぞ!買うものか!」という印象です。これって業界全体への不信感を増加させ、業界全体が信頼を失っているのですから良いことは何もありません。
あなたの業界の中で、こういった「だまし商法」をやっているところがあるのなら、今のうちに「自社は違います」というアピールをし、「ここだけは信頼できる」という流れを作っておく必要があります。本来なら「ややこしいことをやっている」会社が罰せられたり信頼をなくしたりすれば良いのですが、こういったことをやっている会社は巧みに逃げますし、今後も無くなりませんし、一時的に会社を廃業してもしばらくする名前を変えてまたやります。
そのため業界全体としては信頼されないかもしれませんが、信頼されない業界の中でも「ここだけは大丈夫」という強烈な差別化を目指して頂きたいと思います。結局は、いつの時代も消費者はバカにされたくありませんし、丁寧に扱ったもらいたいのです。ネット通販でもDXを導入した購買システムでも、対面販売でも何も変わりません。
もし、あなたのネット通販サイトで今は小さく注意事項を掲載しているのなら、すぐに信頼を得られるような掲載に改善しましょう。改善した結果、顧客が激減するのなら、それは商品の品質ではなく、おかしな仕組みで業績が上がっていただけということです。今回のタイミングで自分たちが行っているビジネスが自信を持って「本当に顧客のためになっている」と言えるのか見直しておきたいですね。